甲状腺疾患
甲状腺疾患

甲状腺は首の前側にある蝶形の臓器で、全身の代謝を調節する「甲状腺ホルモン(T3・T4)」を産生・分泌しています。甲状腺ホルモンは体温・心拍数・エネルギー消費・消化機能など、生命活動の根幹にかかわる多くの働きを調整しています。
甲状腺に何らかの異常が生じると、ホルモンが過剰になったり不足したりすることで全身にさまざまな症状が現れます。甲状腺疾患は内分泌疾患の中で最も頻度が高く、特に女性に多い(男性の約5〜10倍)ことが知られています。
当院では、血液検査によるホルモン測定と甲状腺超音波検査(エコー)を組み合わせ、甲状腺疾患の診断・治療・経過観察を行っています。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの産生・分泌が不足し、全身の代謝が低下する状態です。日本で最も多い原因は「橋本病(慢性甲状腺炎)」と呼ばれる自己免疫疾患で、自分の免疫が甲状腺を攻撃することで炎症・機能低下が生じます。中高年の女性に多く見られますが、若い世代や男性にも発症します。
甲状腺機能低下症の主な症状は以下の通りです。症状が徐々に進行するため、加齢や疲労と混同されやすく、発見が遅れることがあります。
診断は血液検査でTSH(甲状腺刺激ホルモン)・FT3・FT4を測定することで行います。TSHの高値(下垂体が甲状腺に働きかけを強めているサイン)が甲状腺機能低下の重要な指標です。橋本病では抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体が陽性となることが多いです。
治療は、不足している甲状腺ホルモンを薬(レボチロキシン)で補充する「甲状腺ホルモン補充療法」が基本です。適切な量を継続的に内服することで、多くの症状の改善が期待できます。定期的なTSH測定によって薬の量を調整しながら管理します。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身の代謝が異常に高まる状態です。最も多い原因は「バセドウ病(グレーブス病)」で、自己抗体(TSH受容体抗体:TRAb)が甲状腺を持続的に刺激することで甲状腺ホルモンが過剰になります。20〜40代の女性に多く見られます。
バセドウ病の主な症状は以下の通りです。
診断は血液検査(TSH低値・FT3/FT4高値・TRAb陽性)と甲状腺超音波検査で行います。治療は主に以下の3つの方法から、患者さんの状態・年齢・妊娠の有無などを考慮して選択します。
薬物療法
抗甲状腺薬(チアマゾール・プロピルチオウラシル)でホルモン産生を抑えます。妊娠可能年齢の女性や軽症例に多く用いられます。定期的な血液検査で副作用(白血球減少など)をモニタリングします。
放射性ヨウ素療法(アイソトープ治療)
放射性ヨウ素を内服し、甲状腺の組織を縮小させる治療法です。妊娠中・授乳中は使用できません。
手術療法(甲状腺切除術)
甲状腺の大部分を切除する手術です。甲状腺腫が大きい場合や薬物療法が困難な場合に行われます。
当院では薬物療法による管理を行い、放射性ヨウ素療法・手術が必要と判断した場合は、専門病院へ速やかにご紹介します。
甲状腺結節とは、甲状腺内にできる限局したしこり(腫瘤)のことです。超音波検査の普及により、健康診断や人間ドックで発見される機会が増えています。甲状腺結節の90%以上は良性(腺腫様甲状腺腫・のう胞など)ですが、一部に悪性(甲状腺がん)が含まれます。
甲状腺がんのうち最も多い「乳頭がん」は、一般に進行が緩やかで予後が良好とされています。一方で、まれに進行が速いタイプ(未分化がんなど)もあるため、結節を発見した場合は超音波検査による評価が重要です。当院では超音波検査で結節の性状(大きさ・形・石灰化・血流など)を評価し、悪性が疑われる場合は頭頸部外科・耳鼻咽喉科の専門施設へ速やかにご紹介します。
産後甲状腺炎は、出産後3〜6ヶ月ごろに甲状腺の自己免疫性炎症が起こる状態です。一時的な甲状腺機能亢進(動悸・体重減少・イライラ)に続いて、機能低下(倦怠感・むくみ・気分の落ち込み)が生じることがあります。産後うつと症状が重なるため見落とされやすく、産後に体調不良が続く場合は甲状腺機能の確認をお勧めします。多くは自然に回復しますが、機能低下が持続する場合はホルモン補充療法を行います。
甲状腺疾患の診断・経過観察には、以下の検査を組み合わせて行います。
甲状腺機能血液検査
TSH・FT3・FT4を測定します。TSHは甲状腺機能の最も鋭敏な指標で、微妙な機能変化も反映します。
自己抗体検査
抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体(橋本病)、TRAb・TSAb(バセドウ病)を測定します。
甲状腺超音波検査(エコー)
被ばくなく・痛みなく実施できる検査で、甲状腺の大きさ・形態・内部エコー・結節の有無と性状・頸部リンパ節の状態などを詳細に評価します。当院で実施可能です。
サイログロブリン
甲状腺がんの手術後の再発モニタリングなどに使用します。
以下のような症状や状況がある方は、甲状腺疾患の可能性があります。内分泌内科での検査をお勧めします。
甲状腺疾患は、症状が多彩で気づきにくい一方、血液検査・超音波検査によって比較的早期に発見・診断できる疾患です。適切な治療によって多くの症状の改善が期待できます。
当院では、甲状腺ホルモン検査・超音波検査を用いた丁寧な診断と、患者さんの状況に合わせた治療・経過観察を行っています。「甲状腺が気になる」という方は、まずお気軽にご予約・ご相談ください。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個々の症状・治療法については必ず医師にご相談ください。
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